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続くタコの不漁と燃料高騰、昭和41年からタコを取り扱う【マルツボ】が今できること

白糠町が誇る豊富な水産物。その中でも秋サケに次いで二番目の漁獲量があるのがタコです。2022年の取扱金額は、なんと3億円*1を超えています。
白糠町でタコの加工工場を営む、有限会社マルツボの大坪洋一さんにお話を伺いました。
 
*1. 参照:令和4年(2022年)の白糠漁港の漁獲量


昭和41年から、この地でタコを取り扱ってきた

創業は昭和41年。この白糠の地で、代々タコを扱ってきました。“会社を継ぐのではなく、一から始めれば”という話になり、私が新たに設立したのが有限会社マルツボです。
 
白糠町は昔から漁業が盛んな町。タコ以外にも、鮭、ししゃも、毛ガニなどさまざまな海産物が水揚げされます。その中でも、白糠町のタコは全国から高い評価をいただいているんです。
 
マルツボでは、水タコのスライスや、加工品などを生産し、市場や業者の方とお取引をしています。北海道内はもちろんのこと、関東も九州も全国にタコを届けてきました。全国展開するレストランや寿司チェーンともお取引があるので、みなさんも当社の商品を一度は口にしたことがあるかも知れません。

工場の朝は7時から。手作業で丁寧にタコを加工

その日のタコの仕入れ具合や、注文によって日々やることは変わります。漁でタコが水揚げされると、まずは仲買人の方と価格や量を交渉し仕入れをするんです。ここ最近は、タコが不漁で水揚げ量が減っているため、手に入るだけ仕入れても注文に追いつかないこともあります。
 
工場が動き出すのは7時頃。夕方の4時頃までみんなで作業をしています。水タコのボイルや、水タコのスライスが当社の主力商品なんですが、今日は、味を付けた加工商品を作っているところです。

ボイルしたタコを手作業でカット。その後はタコを平たく並べて一度冷凍します。一定時間冷凍した後に味付けをするんです。
 
しょうがで味を付けた商品が「美味しいから生姜ない!」わさび味は「たこわさって食っ蛸とある?」キムチ味は「こんな辛いの食っ蛸とある?」という名前。どれも当社の人気商品に成長しました。
 
商品開発はとても楽しいですね。タコの頭や足の根元など、かつてはあまり食べられていなかった部位を活用し商品化することで、新しいマーケットを築くことができています。

開発した頃は、わさびやしょうがで加工する工程が目に染みて染みて。みんなで「ゴーグルでも買うか?」と話をしていたんですが、慣れとは不思議なもので、今では全く気にならなくなりました(笑)。

ユニークな特産品を作って白糠町の観光客を増やしたい

“まずは手にとってもらいたい”、そんな思いから商品はユニークなネーミングを意識しています。世の中においしい商品はたくさんある。その中で当社の商品を食べてもらうためには、まず手に取ってもらわないと話になりません。
 
だからまずは「なんだこれは?」と目を引くことが大事かなと思ったんです。ネーミングにこだわったのはそのためです。とはいえ家族からは、「またふざけた名前をつけて…」って毎回呆れられているんですけどね(笑)。お客様の印象に残っていれば嬉しいです。
 
当社で初めて作った加工商品は、2013年発売のタコのレトルトカレーです。白糠町の特産品になればと思い開発しました。
 
白糠町って、みんな通り過ぎてしまうんです。2013年に高速道路ができたのですが、移動が便利になっただけで白糠インターで降りる人はほとんどいない。何もないこの町は素通りされちゃうんですよね。
 
特産品があれば、白糠町に立ち寄る意味ができる。そこで作ったのが「たこカレー」なんです。

私の母親が子供の頃、白糠町では肉はあまり食べられていなかったそうなんです。肉は高級品で外に出荷するもの。身近にあったのは魚でした。だから、タコのカレーも定番料理だったようです。
 
白糠町の方にこの「たこカレー」を食べてもらうと、「懐かしいね」と言われることもあるんですよ。タコの風味と食感を大切に仕上げた自慢の商品です。ダジャレ好きはこの頃からで、箱には「こんな旨いカレー食っ蛸とないっしょ!」と書きました。
 
今ではネット販売の他、白糠町の道の駅に置いてもらうなど、少しずつ認知が拡大してきたと感じています。

白糠町には何もないけれど、全部揃っている

白糠町は、一見何もないのどかな場所。ですが、綺麗な海も山も川もあって、食べ物が美味しい。しかも釧路空港から市街地までは車で10~20分で、JRの駅もありアクセスが良い。実は何でも揃っているんです。
 
すごく良い所なのに、全国的には名前が知られていません。ここで生まれ育った身としては、残念なことだと思っています。
 
地元に新しいマーケットができれば、輸送コストをかけずに新鮮なタコを食べてもらえます。白糠町を全国の皆さんに知ってもらい、人が訪れる町になって欲しいですね。

続くタコの不漁。自然相手の商売の難しさ

ここ数年、タコが不漁で、安定した商品供給が難しくなっています。
 
実は、タコの生態系って、まだきちんと解明されてないんです。海のどの辺りでどうやって暮らし、何年ぐらい生きるのか実はわかっていない。だから、ここ数年の不漁の原因も、明確にはわからないんですよ。
 
水温の変化だとか、それに伴う餌の減少だ、など、いろんな説がありますが、はっきり原因がわかりません。だからこの不漁がいつまで続くのかも、いつ解決するのかもわからない。
 
お客さまからの注文がいくら増えたとしても、売り上げが上がらないのが、自然を相手にした商売の難しいところです。
 
だから、今後の見通しも立てにくいんです。本当は新しい商品も開発したいんですけど、タコが手に入らなければそうもいきませんからね。

加えて燃料代や輸送費の高騰も深刻です。タコをボイルするときに、大量の燃料を使用するのですが、ここ最近燃料代がぐっと上がりました。また、2024年問題と呼ばれているように輸送費も上がる一方です。
 
さらには働き手不足で、新しい採用も難しい。従業員の高齢化も進んでいて、技術の継承がままならないのが実情です。
 
苦しい状況ではありますが、今できることで乗り越えるしかありません。今は、白糠町が誇る高品質なタコを、価値を理解してくださるお客さまに、最高の状態で届けていこうと思っています。

人に喜んでもらうことが大好き。お客さまの声が励みに

今は市場との取引は、豊洲と新潟に絞っています。その他はネット注文を受け、個人のお客様やレストランと直接お取引をしています。
 
これまで1,000軒を超えるレストランにタコを卸してきました。ありがたいことに、コロナ禍でも注文は減ることはなく乗り切ることができた。さらには、最近では食にこだわりを持つ人が増え、リピート注文が次々に入っています。
 
直接のお取引だと、お客さまの反応が返って来るのが良いですね。「良質なタコが届いて驚いた」「おいしかったからまた注文します」と、嬉しいコメントもたくさん。お客さまの声は、社内で共有し、業務に活かしています。何より励みになりますよね。
 
昔から、人に喜んでもらうことや共感してもらうことが好きでした。だから一から会社を作ったり、さまざまな新商品開発に挑戦してきたんだと思います。これからもタコを通じてお客さまに喜んでもらいたい。当社の従業員にも、やりがいを抱きながら働いてほしいと思っています。
 
これからも頑張り続けるので、当社の自慢のタコを手に取ってみて貰えたら嬉しいです。

有限会社マルツボ
〒088-0562
北海道白糠郡白糠町恋問2-2-23
TEL:0154-75-2055
URL:https://www.tako-marutsubo.com/
公式LINE ID:@809htnhb(https://lin.ee/TzBYSjz
インスタグラム:https://instagram.com/tako.maru_tsubo?r=nametag