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地域が元気になれば日本が元気になる!白糠町がめざす、未来へと繋がるふるさと納税

北海道の東部に位置する人口約7,000人のまち、白糠町(しらぬかちょう)は、アイヌの言葉で「岩磯のほとり=シラリカ」が町名の由来となっています。太平洋に面しており、暖流と寒流が交わる白糠沖は絶好の漁場で、1年を通じて様々な海産物が獲れます。また、漁業だけではなく、町有面積773㎢の83%を占める森林、鮭やししゃもが産卵のために遡上する川を複数持つなど豊かな自然に恵まれ、農業、林業、酪農・畜産業などの一次産業が盛んです。

この自然に恵まれた白糠町は、いま「ふるさと納税」によって全国の多くの方と繋がっています。総務省が発表した令和5年度ふるさと納税受入額によると白糠町は全国4位。人口一人当たりの寄付額では全国1位となりました。これほどまでに多くの方に、白糠町を知っていただき応援いただいていることについて、ふるさと納税を直接担当する役場職員はどう感じているのでしょうか?また、白糠町の現在や、今後めざす未来とは?

白糠町役場でふるさと納税業務を統括する責任者、企画総務部企画財政課 参事 柴田 智広(しばた ともひろ)がお伝えします。


白糠町役場 企画財政課のスタッフと。一番左が白糠町企画総務部企画財政課 参事 柴田智広

生まれ育った白糠町で、まちづくりに携わる

白糠町でチーズ工房を営む「白糠酪恵舎」の代表・井ノ口さんと

柴田:私は白糠町で生まれ育ちました。白糠町役場に奉職してからは税務や福祉などの担当を経て、企画財政課では総合計画・総合戦略策定や予算編成などの業務に長く携わり、現在の「ふるさと納税担当」としては4年目を迎えました。2024年度も全国からたいへん多くのご支援をいただき、楽天グループが発表したSOY(ショップ・オブ・ザ・イヤー)2024では全国の自治体では初めて6年連続でふるさと納税賞をいただくことができました。この場を借りて、白糠町を応援してくださった皆様に感謝を申し上げます。

私がふるさと納税担当になって、まず取り組んだことは地元の事業者・生産者との関係性構築です。ふるさと納税制度が創設される以前から、白糠町ではまちのPRや地域産業・地域経済の活性化を目的に、ECサイトに自治体直営ショップ「しらぬか町商店」を出店し、地元の特産品を全国へ販売する取組みを行っていたところ、2015年からお礼の品を伴うふるさと納税に参入したことで、より多くの方にまちを知っていただける機会を得ました。

寄付してくださった方へのお礼として、品質の良い地場産品を安定的にできるだけ早くお届けするために、事業者・生産者の皆さんと二人三脚で取り組んできました。白糠町産のミルクを使ってチーズ作りに取り組む「白糠酪恵舎(しらぬからくけいしゃ)」の代表・井ノ口さんもその一人です。

HERES」というインターローカルマガジンにも掲載いただいたので、ぜひ一度ご覧ください。

全国から嬉しい評価のお声が直接届くようになり、我々スタッフはもちろん、事業者・生産者にとっても大きな喜びやモチベーションに繋がっています。中には厳しいご意見もありますが、寄付者さまからいただくレビューはとても貴重な情報であり財産ですので、職員が全てに返信コメントを返しています。その数は月に1,000件以上になりますが、重要なコミュニケーションなので手を抜くことはありません。

ふるさと納税は単なる〝ショッピング〞ではなく、気持ちや思いがこもった〝ご寄付〞ですから、返礼品をお贈りして終わりではなく、まちと寄付者さまとのご縁は、むしろそこから始まると考えています。1対1の繋がりを大切にし、丁寧なやりとりで関係性を深めていくことを常に意識しています。

他自治体との交流で切磋琢磨!共により良い日本の未来をめざす

柴田:白糠町がふるさと納税受入額で上位に入るようになると、全国の自治体からも取組みが注目されるようになり、現在では首長さんを始め、議員さんや担当職員など、年間で20件以上の視察を無料で受け入れています。海外からの希望もあり、一昨年は韓国からの視察もありました。対応が大変では?という質問をいただくことがありますが、来町される皆様とのディスカッションや交流を通して、私たち自身も学びを得ているのです。

実は今、岡山県奈義町(なぎちょう)の若手職員がふるさと納税研修生として来ていて、5か月に渡り一緒に働いています。奈義町は政策として子育て応援に注力していて、2019年の合計特殊出生率は2.95と全国トップを記録し「奇跡のまち」と称されています。その事例を学ぼうとまず白糠町から奈義町へ視察に伺ったのがご縁の始まりでした。

課題は地域によって千差万別ですので、ある自治体の取組みを他の自治体にそのまま当てはめることは難しいわけですが、「地域を盛り上げたい」とか「地域活性化から日本を元気にしたい」など、それらはどの自治体にも共通する思いではないかなと。ですので、これからも白糠町では視察のご希望があれば喜んでお受けします。日本各地の自治体ができる範囲で連携し、まちづくりの好事例を生んでいくことで地域の元気を創っていく。より良い日本の未来のために自分たちは何をすべきで何ができるかを考え、思いを体現していきたいと考えています。

地域活性化の次なる一歩、北海道釧路管内の広域連携について

白糠町と厚岸町の共通返礼品
2024年12月より北海道釧路管内の7町村がふるさと納税で初の広域連携を開始

柴田:ふるさと納税制度を正しく活かして、地域産業と地域経済を活性化する。これが自分の使命であると思っています。ふるさと納税の市場規模は2兆円と言われていますが、現在はまだ半分の約1兆円。この制度を通して、事業者・生産者がもっと頑張ろうと取組みが“おしゃれ”になったり、新たなチャレンジが数多く生まれています。こうした流れを止めずにこれからも持続させていきたいです。寄付は奪いあうのではなく、育てるもの。この「伸びしろ」をどう捉えるか、だと考えています。

そんな中、2024年12月から始まったのが釧路管内の広域連携による共通返礼品の提供です。棚野町長が会長を務める「北海道釧路町村会」では、実は数年前から「共通の返礼品を展開できないか」という話題が上がっていました。制度のルール遵守や様々な課題を解決し、実現までには時間がかかりました。白糠町を含む釧路総合振興局管内7町村(*1)がそれぞれの特産品を出し合い、セット品や定期便の共通返礼品として提供するものです。近隣の自治体が連携することで、地域資源が豊富ではない自治体への補完機能が働くことや、沿岸自治体と内陸自治体が互いの特長を活かせるなど、各自治体が持つノウハウや強み、特産品の魅力を最大限活用して、釧路地域全体の産業振興を推進する新たな取組みとなります。

白糠町で人気のいくらやホタテといった主力の産品を扱ってもらうことで、その自治体の寄付促進に少しでも繋がれば嬉しいことですし、逆に他の自治体の産品を白糠町とご縁のある数百万人という多くの寄付者さまに知っていただくことができます。そうすることで釧路エリア全体に目を向けていただきたい。同じ釧路管内でも、7町村はそれぞれ特色が異なります。例えば、白糠町は一次産業が盛んですが、観光については他の自治体のほうが得意です。自治体の垣根を越えて連携することで、釧路地域の魅力をより幅広くより多く訴求することができると考えています。

現在、広域連携の第1弾として、白糠町のいくらやホタテ、厚岸町の牡蠣をセットにした共通返礼品を展開しています。今後も魅力ある品々を各自治体と連携して開発してまいりますので、ご期待ください。

*1. 釧路総合振興局管内7町村 / 釧路町、厚岸町、浜中町、標茶町、弟子屈町、鶴居村、白糠町

「自分たちの良さとは?」ふるさと納税が、改めて自分のまちを見つめなおすきっかけに

大自然に囲まれた白糠町は、海あり山あり川あり。広い空が広がります。

柴田:ふるさと納税ほど、地方を活性化した制度はこれまでになかったのでは、と考えています。財源という意味でもそうですが、この制度を通してそれぞれの地域が「自分たちの良さってなんだろう」ということを改めて考えるようになったと思います。各地域にはその土地ならではの文化や歴史が必ずあります。そうした原点や足元に目を向けることが、今こそ必要なのだと思います。

例えば、白糠町の歴史は本州とは全く異なるもので、アイヌの人々がこの極寒の厳しい自然環境の中で暮らし、まちの礎を築いてこられた経過があります。時代の流れの中で、本州から和人が移り住むのですが、すべてはカムイ(神)の化身であって敬い感謝しながら使わせてもらうというアイヌの思想や精神は、まちづくりを進めるうえで学ぶべきところが多くあります。自然との共生や命への感謝、獲りすぎないで資源を守ることなど、環境に配慮した持続可能な活動はまさに今日、必要とされていることです。

ふるさと納税で寄せられた寄付金は、豊かな海を守るための海洋調査や漁業のDX推進をはじめ、白糠町の基幹である一次産業への支援に積極的に活用しています。環境に配慮した持続可能なまちづくりを進めて、子や孫の世代に贈っていかなければならない。そうした使命感を持っていますし、それを実践できて学べるフィールドがあるのが白糠町だと思っています。

ふるさと納税の究極の目標とは?思い描く未来の姿

柴田:ふるさと納税を通して白糠町を知っていただけたら、次は実際に来ていただきたいです。気に入っていただけたら白糠町での暮らしも考えてほしい。ふるさと納税が入口となって実現した移住、それが究極の目標かもしれません。そのためにもふるさと納税で多くのご縁をいただいて関係人口の最大化を図っていく。この制度が続くうちに白糠町を応援いただいている方々との関係性をより深めて、もし制度がなくなったとしても、白糠町を第二のふるさとのように感じてくれる多くの皆様方との交流がずっと続いていく、そんな世界を目指していきたいです。

白糠町のこと、この地で素晴らしいこだわりを持って活動する事業者・生産者のことを知っていただきたい。そんな思いで始めたこの白糠町noteも、今回でちょうど20回を迎えました。これからも、いただいた寄付をどう活かし、まちづくりがどう進み、どのような変化や進化があったのか、このnoteを通してしっかりとお伝えしてまいります。そして、白糠町ふるさと納税に関わる全ての皆様から私たちの取組みに共感いただくために何をすべきか思いを巡らせながら、チャレンジを続けてまいります。