オレンジに輝く白糠町の宝石“シラリカいくら”。一度食べたら虜になるその味のこだわりとは
食べ慣れているはずの食材が、産地や製法の違いによって「こんなにおいしいの?」「こんなに味が違うの?」と感動した経験はありませんか?
食材の宝庫である白糠町には、そんな驚きが詰まった食材が数多く存在しており、その中でも特に高い評価を得ているのが「シラリカいくら」です。希少価値の高い「シラリカいくら」とは、一体どんなものなのでしょうか。
広洋水産株式会社 営業部・部長の工藤啓介さんにお話しを伺うとともに、2024年10月10日(木)~10月14日(月)の5日間、東京・下北沢にオープンした期間限定のポップアップレストラン「シラリカいくら食べ比べ亭」の様子もお届けします。
一口食べれば今までのイメージが変わる「シラリカいくら」
自分へのご褒美やハレの日など、特別な日にこそ食べたくなるいくら。通常、市場に出回っているいくらの大半は、すぐに食べられる醤油漬けになっていますが、この「シラリカいくら【生】」は、味付をしておらず、いくら本来の味わいを楽しむことができます。そのおいしさは、白糠町の特産物を世界に発信する「シラリカブランドプロジェクト実行委員会」に認められ、シラリカブランドの第一弾商品として選出されたほど。
一口食べれば、今までのいくらのイメージが一変し、素材だけの贅沢で濃厚な味わいに驚くはず。そのまま食べてもよし、アレンジしてもよしと、食と食材の町である白糠町が誇る逸品なのです。
「おいしい!」「初めて食べた!」聞こえてくるのは感動の声
そんな「シラリカいくら」のおいしさを多くの方々に体験してもらうべく、2024年10月10日(木)~10月14日(月)の5日間、東京・下北沢で期間限定のポップアップレストラン「シラリカいくら食べ比べ亭」がオープンしました。また、初日にはプレス発表会も行われ、たくさんの取材陣が訪れました。
このレストランで食べられるメニューは、生いくら、醤油漬け、塩麴、オリーブオイル、ラー油の5種類が一度に味わえる「シラリカいくら食べ比べ御膳」と、「シラリカいくら食べ比べおにぎり」の2種類。
2回目の開催となる今年は、メニューをはじめ、期間や営業時間の拡大、座席数も2倍に増やすなど、昨年よりもパワーアップしています。その場でふるさと納税の寄付ができるコーナーも設置されるなど、新たな試みも行われました。
「シラリカいくら」を口にしたお客様からは、「おいしい!」「初めての味!」「生いくらの方が好きかも」と、あちらこちらから大絶賛の声が上がっていました。
広洋水産の技術が生んだ「シラリカいくら」ができるまで
では、「シラリカいくら」はどのように作られているのでしょうか。おいしさへのこだわりに加え、製造工程から誕生秘話まで、工藤さんにお話を伺いました。
工藤:「シラリカいくら」の生産時期は、9月と10月。道東沖で獲れる北海道産の秋鮭を使用しています。漁期自体は9月から11月までありますが、11月の卵は皮が硬くなる傾向があるので、10月までで仕入れを終わらせます。朝水揚げされた魚はそのまま工場へと運ばれます。
加工する際にも、鮮度を損なわぬよう細かな部分までこだわっています。まず、お腹から取り出した卵をバラバラにして、洗浄、水切りなどを行いますが、ここまでの工程でかかる時間は、わずか30分以内。その後、1パック250gの容器に入れてそのままトンネルフリーザーへと運ばれていきます。いかにスピーディーに作業が進んでいくかが分かるかと思います。
この迅速な作業に加えて、品温を上げないということにもこだわっています。いくらはベルトコンベアに乗せて長い間シャワーのトンネルを通っていくのですが、この水の温度を10度以下に設定し、冷たい塩水をかけることで温度が上がることなく製造が進んでいきます。味の劣化の大敵である酸化を防ぐため、窒素置換包装や、窒素ガスを気化させて急速冷凍しています。
「シラリカいくら」は、水揚げされたその日のうちに全量を加工します。この、徹底して鮮度にこだわる製法により、「シラリカいくら」は希少価値の高い最高級の品質を実現しています。
新たな価値を見出された、シラリカいくら【生】
工藤:生いくらって、本来は使いにくい商品だと思うんです。自分で味付けをするのって、ちょっと面倒ですよね。パックから出して、すぐに食べられる方が便利だし、何よりも、価格が高くなってしまうという問題があります。これはなぜかというと、内容量に醤油タレを含まないので、必然的に粒の数が多くなってしまうためです。味は抜群にいいけれど、消費者としては値段が安くて便利な方を選びますよね。そういったこともあって、生いくらは限られた方々の分しか作っていませんでした。しかし、シラリカブランドプロジェクト実行委員会の東京の企業から、「このおいしさと希少性には高い価値がある」とアドバイスを受け、‟手作りするいくら”に新たな魅力を感じてもらえるならと、「シラリカいくら【生】」商品化の取り組みを始めました。
そもそも業務用中心の販売ということもあって、お客様の声を直接聞くという機会がなかったのですが、ふるさと納税を通してお客様のレビューを見ることができるようになりました。「シラリカいくら」は高評価をいただき、その中でも「今まで食べられなかったけど、このいくらなら食べられる」というレビューは、心からうれしく、今でも励みになっています。お客様の声は、従業員の働くモチベーションになり、自社への誇りにも繋がっています。
北海道産いくらの現状と、これからのこと
北海道産のいくらを取り巻く現状は、決して明るいとは言えません。いくらの未来について、工藤さんが目指していくことや大切にしていきたいことについて伺いました。
工藤:20~30年くらい前の日本で食べられていたいくらというのは、北海道産だけでした。昔は15万トンが豊漁・不漁の境目と言われていたのですが、今や5万トン以下にまで落ち込み、3分の1に減っています。現在は、輸入のいくらが出回って「北海道産のいくらと輸入のいくら、どっちも同じでしょ?」と思っている方も多いです。しかし、ぜひ一度食べ比べてみてください。おいしさの違いがすぐに分かると思います。今回の「シラリカいくら食べ比べ亭」も、北海道産いくらのおいしさをもう一度知ってほしい、認知してほしいという思いで開催しました。
しかし、現状として鮭の漁獲量が減っている以上、大量にいくらを生産していくことはできません。持続可能な産業とするために過剰に作りすぎず、必要な場所へ必要な分だけ作りながら、ふるさと納税などを通して、1人でも多くの方に食べていただければうれしいです。窒素置換包装や窒素ガスを使用した急速冷凍は、とてもコストがかかりますが、品質を落とすわけにはいきません。私がこの先に目指すものは、新たに何かをするのではなく、「このまま、いいものを作り続ける」ということが大切だと思っています。
「白糠町をもっと知ってほしいから」事業者と役場が同じ目線で歩む町
工藤:白糠町は、食べ物がとてもおいしい町です。鹿肉、羊肉、チーズ、海産物だってあるし、野菜も作れる。すごくポテンシャルの高い町だと思います。だからこそ、そういったところをもっと発信していきたいです。
町の発展のためには、白糠町役場の皆さんと力を合わせていかなければいけません。役場も「事業者さんや生産者さんを応援したい」という熱い気持ちを持った人ばかり。知識も豊富で、「いくらの1粒たりとも残すわけにはいかない」と強い信念を持って毎日頑張ってくれています。私も、同じゴールに向かって走るチームの仲間という感覚があります。
残念ながら、町の事業者たちが守ってきたおいしいものの数々を、地元で食べられる場所であったり機会が少ないという以前からの課題があります。一方で、これからはもっと町に活気や賑わいを創っていくために、若い人にも来てほしいという気持ちもあります。今回の「シラリカいくら食べ比べ亭」のようなイベントを、今後もどんどんやっていって、白糠町の魅力をたくさんの人に知っていただき、その先の未来に、地元で色々と食べられる環境ができたりしたら最高ですよね。そうして、若者が集まる活気のある町になったらいいなと思いますし、私も頑張っていきたいと思っています。