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「羊はサステナブルな生き物」わずか1%未満の国産羊の未来とは?【茶路めん羊牧場】

白糠町の南側、茶路川のすぐそばにある「茶路めん羊牧場」。広々とした放牧地で、約900頭の羊が元気に飼育されています。
35年前、たった35頭の羊を連れて牧場経営を始めた武藤浩史さんにお話を伺いました。


牧場のコンセプトは「羊を一頭を余すところなくいただくこと」

私は、牧場を始めた当初から「羊をまるまる一頭無駄にしないこと」を大切にしてきました。羊の命をいただくわけですから、リスペクトの気持ちを常に忘れずに持っています。

茶路めん羊牧場の特徴①「羊肉の飼育・加工・販売までを一貫して行う」

羊を無駄にしないための取り組みとして、牧場内で羊肉の飼育・加工・販売まで一貫して行っています。

牛や豚の場合、生産者と加工者と販売者がそれぞれ別なのは当たり前。でも、羊は流通量が少なく、加工だけを行う工場が国内にはありません。枝肉と言って、部位ごとに切り分ける前の状態での流通が一般的なんです。

しかし、枝肉を捌く技術を持った飲食店や卸売業者は限られますし、仮に捌けたとしても不要な部位も出てくるでしょう。
飲食店や卸売業者のニーズに応えるため、茶路めん羊牧場では、枝肉からさらに個別の部位に分ける加工、そして販売、発送まで一貫して行っています。「欲しい人に欲しい部位を届けたい」と自然に始めた取り組みです。

自社で発送まで行うことが多いため、自分たちで育てた羊が、どんな人にどんな料理として食べられているかが見える。やりがいを感じますね。

お客様からすると、欲しい部位をピンポイントで手に入れられるメリットだけでなく、「生産者の顔が見えるので安心」なんてことも言われます。
今では、口コミで北海道から九州まで、日本全国あらゆる場所へ発送しています。

当初は、特定の部位だけ人気が出て、売れ残る場所が出てくるんじゃないかと心配していましたが、意外とそんなことはなく。ミシュランの星がつくようなレストランが欲しがる部位もあれば、街の居酒屋さんが欲しがる部位、一般家庭で好まれる部位もあって、羊肉を内臓まであますところなく販売できています。

茶路めん羊牧場の特徴②「羊毛製品が充実」

また、羊毛や油を使った独自の製品作りにも力を入れています。羊毛製品も数多く展開しているのは羊牧場の中でもめずらしいです。

羊毛は加工前に洗浄が必要ですが、専門の工場が国内にないので、福祉作業所に協力してもらって手洗いし、汚れを取り除きます。きれいになった羊毛で、靴下やふとん、枕などオリジナルの製品を作っています。羊毛は一見暖かくて冬用だと思われがちなんですが、通気性がよく熱もこもらない。通年で使えるんですよ。

他にも、羊乳や羊から出る油もなるべく活用できるように工夫しています。

茶路めん羊牧場の特徴③「レストランを併設し、羊料理を提供」

牧場のすぐ隣では「Farm Restaurant Cuore」を営んでいます。牧場で育った羊の料理をはじめ、北海道産の食材を使った料理を提供しています。実際に飼育されている場所のすぐ近くで羊を食す。羊のありがたさを感じてもらい、シンプルに羊を好きになってもらいたいですね。
地元の人はもちろんですが、東京をはじめ遠方からのお客様も多くいらっしゃって、毎日忙しくさせてもらっていますよ。

Farm Restaurant Cuore 羊のTボーンステーキ(メニューは時期や材料状況によって変動します)
店内では羊毛製品や羊肉製品を購入できます

国内羊市場は年々盛り上がりを見せつつも、流通は横ばい?

10年前と比較して、大都市を中心に羊の人気は年々上がっています。ヘルシーで健康的なイメージが今の時代に合っているのでしょう。また、食の多様性が進んだということも一因でしょうか。昔はコース料理のメインは9割が牛でしたが、今では羊が選択肢のひとつであることもめずらしくありません。
にもかかわらず、国内の羊肉輸入量は年間2万トン程度。これは10年前からさほど変わっていないんです。

需要が高まったからといって流通を増やすことは簡単ではありません。羊肉の輸出量世界1位であるオーストラリアでも、干ばつの影響による生産量減少や、世界的な羊肉需要上昇によって、輸入量を単純に増やせないのが現状です。

では国内生産を増やせばいいのでは?よくそう言われます。
国内に流通する羊肉のなかで、国産羊はわずか1%未満。こんなに母数が少ないものを短期間で急激に増やすのは難しいです。僕のところにも、新しく羊農家を始めたい方が訪ねてきますが、始めるための羊の調達ができない。牛や豚であれば、家畜自体を買ってきて増やせばいいのですが、羊ではそれも簡単ではないのです。

こうやって需要に供給が追いつかず、必然的に羊は高級肉になってしまっています。私は「羊がもっと身近な存在になって欲しい」という想いこそあるものの、なかなか追いつかないのが現実です。

羊はサステナブルな生き物

なかなか難しいことも多いですが、そんなに悲観的になる必要もないです。羊って、実はサステナブルな家畜なんですよ。

今、畜産が危機におちいっています。
気候変動やウクライナ情勢により、家畜の餌代が高騰。かといって出荷価格を簡単に上げるわけにもいかず、どこの畜産農家も苦しんでいるんです。

家畜飼育では穀類を与えるのが今の主流ではありますが、牛も羊も草食動物なので原っぱに放牧して、草を餌とした飼育も可能です。体が小さい羊の方がより簡単ですね。

うちでは放牧を行い、主に草を餌として羊を育てています。羊のふん尿や、汚れや品質の問題で羊毛製品に使えなかった羊毛を放牧地の堆肥に。そうすると、化学肥料を使わなくても大地が育つんです。

羊が放牧地の草を食べる。放牧地に堆肥を落とす。放牧地が育つ。またその草を羊が食べる…。羊を育てることは、資源が循環することなんですよね。
サステナブルという考え方は、羊にとっては追い風になると思っています。

茶路めん羊牧場
〒088-0342 北海道白糠郡白糠町茶路基線88-1 
URL:https://charomen.com/
*茶路めん羊牧場は観光牧場ではありません。取引申し込みや見学等に関しては事前連絡の上、牧場主の了承を得たのちに訪問してください。

Farm Restaurant Cuore
〒088-0342 北海道白糠郡白糠町茶路川西
営業時間:火・水・木・日 11:30〜18:00(LO. 17:00)
     金・土 11:30〜15:00(LO.14:00 )18:00〜21:00(LO. 20:00)
定休日:月曜日・月2回の不定休
冬季休暇:1月・2月
TEL:01547-2-5030
URL:https://charomen-cuore.com/
Facebook:https://www.facebook.com/FarmRestaurantCuore/
*GW・お盆など連休がある場合、お休みをいただくことがあります。公式HPやFacebookにて、お休み情報をご確認ください。


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